散薬監査支援装置「コナミル」開発

社名:株式会社ウィズレイ
所在地:岡山県
事業内容:分光分析技術を用いた医薬品判別システム等の提供
開発時期:2019年

技術情報

プラットフォーム:Windows
DB:MySQL
言語:C#
H/W:分光器

開発ストーリー

個人やベンチャーによる、世の中の課題解決を目指した新しい技術に光を当て、支援する目的で実施された第1回岡山テックプラングランプリ。そこで地元の歴史ある大学、就実大学の薬学部薬学科 森山准教授が開発された【医薬品同定システム】が、“中国銀行賞”、“日本ユニシス賞”を受賞されました。
医薬品同定システムとは、これまで困難だった調剤薬局で提供される一包化散薬の内容物の確認を、簡単に、また詳細に行うことを可能とします。提供される一包化散薬をより安心で安全なものにするだけでなく、取り扱う薬剤師の時間的、心理的負担を軽減し、より本質的な「患者(人)と向き合う業務」へのシフトを可能としてくれるのです。
この社会的意義の高い製品を世の中に提供するにあたり、必要となるソフトウェアの開発を、テックプラングランプリの主催・協力企業様からのご紹介により、セリオが携わらせていただくこととなりました。
その後、森山先生が就実大学発のベンチャー企業として、「株式会社ウィズレイ」を設立され、散薬監査支援装置【コナミル】として、試験運用を始めていらっしゃいます。

ご提案

新しく世に生み出す製品のためのシステムであり、ゼロから構想を考える必要がありました。その中で大切にしたことは、「エンドユーザーの声」です。この製品の開発に至った森山先生だけでなく、この製品のエンドユーザーである、薬剤師として働く方々のリアルな声を聞くことで、直接製品の仕様に活かしていくことができました。
例えば、測定する処方箋の情報は、一部の手入力が必要な場合を除いて、多くをデータ連携して自動表示させますが、その場合は処方箋の内容はシンプルに変更不可とする想定でした。ですが、実際の現場では患者のために複数の処方箋指示を一包化してあげるケースや、処方箋指示自身が処方量を示しておらず、読み取りや再計算が必要なケースなど、処方データ通りに調剤しない場面が多く存在することを知りました。こういったケースを一からの手入力としてしまわず、連携したデータを修正する仕様を提案しました。
現場のリアルを知ることで、当初前提としていたことをも覆しながら、真に必要なユーザビリティを模索しています。

苦労した点

今回の開発は、期間や予算を鑑みて、アジャイルで開発することにしました。
実際に手を動かしながら、開発途上で先生や現場の要望をどんどん取り込みながら創り込んでいく。フットワークを優先し、どんどんブラッシュアップしていくことで、ニーズに近づけ、品質を高めている実感がもてました。今回の開発においては、最後まで設計書は必要なかったと感じています。

また、これまでの業務経験では、大規模で仕様や開発ルールがかなり細かく決まった案件が主でしたが、今回は、環境や仕様、ルールから最適を探すところから始まり、自由度の高さと、その製品への責任意識を実感することになりました。
予め決まっているルールの中には、品質が上がりにくいものや役割を果たしていないのに存在するものもあり、そもそも存在するルールに疑義を抱くことの必要性を再認識するきっかけにもなりました。

注意した点

この開発のお話を頂いたとき、この製品が広まることでの社会への価値を強く感じました。そして、この製品を評価していただくための私たちができる貢献として、アウトプットの正確性は去ることながら、より人に寄り添える製品にすることではないかと考えました。

エンドユーザーが、限られた時間で行う視覚の動線や、判断順序などを追うことで、必要な情報の量や、表示方法を厳選しました。例えば、分析結果の成分順位リストの必要ケースを判断し、表示有無を変える。またリストではなく、グラフ曲線の近似として視覚的にみせるなどの工夫を模索しました。
今後製品化していく過程でも、改善を続け、少しずつユーザーエクスペリエンスを実現できたらと考えています。

開発にかける想い

偶然なことに妻が薬剤師だったため、日々の業務の忙しさや監査業務の難しさを日常的に知っていました。また、医療上のアウトプットを判断するためのものである以上、何か問題があると最悪の場合は人命に関わるという精神的負担を少しでも軽減できたらと思い、開発に力を入れました。

また、エンジニアとしては、これまでと異なり新しい手法や技術に挑戦できるという、自由に解き放たれたような開発環境下で、その試行錯誤を楽しむことができました。

voiceお客様の声

設立間もないスタートアップ企業にとって、何よりも重要であるのは開発スピードであると感じています。今回、「コナミル」のソフトウエア開発をセリオ様に依頼させていただきましたが、こちらの要望に対するレスポンスの速さやフットワークの軽さに大変驚かされました。ある日お願いしたプログラム改修が、翌日には完全な形で仕上がっていたり、納品直前のトラブルに電話をつなぎながらその場で解決していただいたりと、我々がアクセルを緩めることなく前進していけるようにサポートしていただいたことには本当に感謝しております。