2020年7月2日は真の独立記念日

本日、2020年7月2日は、セリオの32回目の設立年記念日ですが、この日は実に、実に、実に、記念すべき日となりました。本来であれば、朝礼を実施し、その意義を社員の皆さんにお伝えすべきところではありますが、コロナ対策上大人数での会合をしておりませんので、社長メッセージとしてご報告させていただきたいと思います。(※この内容は、近日PHP社から発刊予定の水沼啓幸さん、坂本洋介さんの共著「【実践】強い会社の『人を大切にする経営』」の中でも事例として取り上げていただく予定です)

本日、当社は、「セリオ株式会社従業員持株会」を設立し、「セリオ株式会社役員等持株会」とあわせて、セリオホールディングス株式会社の所有株式の全てを取得する形で MEBOを実施し、これによってセリオ株式会社の株主構成は、役員等持株会 82.5%、従業員持株会 17.5% の持分となりました。

MEBOとは、Management Employee Buy Outの略です。わかりやすく言えば、会社の経営上、第三者の株主から完全に独立(自立)するため、会社の経営陣と社員が、自社のすべての株式を取得することです。日本ではまだMEBOを実践する企業は少なく、私が知っている限りでは、当社にMEBOをご教示くださった株式会社日本レーザー様に次いで、セリオが2社目となります。

 

MEBOを実施する目的は、経営理念である「社員の幸福を実現する」ため

当社は、2013年に経営理念を制定して以降、重要な経営判断においては常に「社員の幸福を実現する」ことを優先してまいりました。これは、ある意味、一般的に経営戦略で重視される業績重視、成長拡大重視、シェア獲得重視、競争優位重視、景気・流行重視等に逆行する考え方です。では、一般的になぜ上記のような経営戦略が重視されるかと言えば、結局のところ、会社の支配者は株主であり、株主の意向を重視するからであると思います。そこで、私は、会社の支配者を役員と社員だけにしてしまえば、誰にも気兼ねなく社員の幸福を実現する経営ができると考えたわけです。

では、簡単にその経緯を振り返ってみたいと思います。

MEBO実施までのフロー
※2020年7月時点の持株比率

 

MEBO実施までの経緯

私は、判断に迷ったときなど、常に自分に言い聞かせていることのひとつが、「リーダーとは、自分が何をすべきかを考え、決断し、実行できる存在であれ」ということです。そういう意味では、本日のMEBO実施までの経緯は、私がリーダーとし実施した最大の仕事であったと思います。

私は、前社長の急逝を受けて2011年にこの会社の社長になりましたが、その時点では、この会社の進むべき方向は全く見えず、まさしく五里霧中の状態でした。なぜかというとそれまでは前社長がすべてを決める体制であったため、その存在が突然いなくなって、誰がどういう風に判断をすべきか誰にも分からなかったからです。その後しばらくの間、会社経営的には混迷する時期が続きました。経営者として八方ふさがりのような状況に陥った中で、私は「自分は、今、何をすべきか」を考え、熟慮に熟慮を重ねて以下の方針を打ち出しました。

 1.経営理念を「社員の幸福実現」と定め、これを経営目的とする。
 2.そのために、Going Concernを図る経営方針を実施する。
 3.そのために、WTPを創造するための戦略を採る。
 4.そのために、人財力を強化する。

それから10年近く経ちましたが、ありがたいことに、この経営方針は社内に定着し、幹部の皆さんを中心に、この方針に沿った経営を実践して下さっています。

 

独立に向けての第一歩MBO

「何をなすべきか」を考える上で、最も考え抜いたことは『資本政策』でした。そして、坂本光司先生に教えを請い、たどり着いたのが、日本レーザーの近藤会長が実施されたMEBOでした。(※近藤会長の日本レーザーにおける卓越した経営については、近刊『中小企業の新・幸福経営論』(日本経営合理化協会出版局)にも詳細に述べられています。)

しかし、MEBOを実現するためには、

 1.創業家ご一族全員から株式譲渡の了解をいただくこと
 2.株式購入価格の決定
 3.取得後の株式構成と巨額な購入資金の調達

等、その時点では、到底越えることができないと思われる大きな障害がありました。MEBOが、日本でこれほど少ない理由は、その形式が、親会社からの独立であるにせよ、オーナー一族からの独立であるにせよ、そのために越えねばならない障害があまりにも大きく、実施する側の負担(特に巨額の個人的な借入が発生すること)が大きすぎるからだと思います。

当社の場合、多くの方々のご協力を得て、最終的に2014 年7月、代表取締役社長である私、壹岐敬が設立した「セリオホールディングス株式会社」と、役員と当時の主要幹部が設立した「セリオ株式会社役員等持株会」により、発行済株式の全て取得するMBOを実施することができました。

第一関門であった、オーナーご一族のご了解という点に関しては、圧倒的過半数の株を保有しておられた前社長の奥様である寺崎直子氏が、私の経営方針に賛同して下さり、全面的にご協力いただけたことと、当時の顧問であった大阪の法律事務所の弁護士のご尽力が大きかったと思います。

二番目の関門に関しては、現在当社の顧問で、監査役も務めていただいている税理士法人石井会計事務所に適切なアドバイスをいただき、純資産方式と類似業種批准方式等により株価(時価)を算定したわけですが、時価で買い取ったのはセリオホールディングス分と自社取得分で、役員等持株会は額面(配当還元方式での評価)で譲渡するというスキームをご提案いただきました。

三番目の関門のひとつは、石井会計事務所、秀岡司法書士事務所など顧問の方々のアドバイスをもとに株主構成案を立案できました。最後の資金調達に関しては、私が社長就任当時、百十四銀行の岡山支店長だった方が、本店の審査担当役員に昇格しておられたため、直接高松の本店に出向いて説明し、ご融資の了解をいただけました。

もちろん、トータル的に一番恵まれていたのは、先述の日本レーザーの近藤会長と、近藤会長をご紹介くださった坂本光司先生のお二人と巡り会えたことです。お二人とのご縁なくしては、何も始まらなかったと思います。

とは言うものの、この間の出来事はまさに奇跡のようなことの連続でした。何か見えない力によるご加護があったとしか思えません。お正月には幹部全員でお参りに行き、個人的には毎月ご祈願を欠かさない理由はそこにもあります。

 

MBOの問題点とMEBOへの経緯

さて、こうしてMBOが実現したわけですが、この時点での持ち株比率は、セリオホールディングス株式会社 51%、セリオ株式会社役員等持株会49%の持分でした。(※持ち株比率は自社保有分を除いて算出してあります)

ところが、セリオホールディングスと言っても、実質壹岐敬個人です。しかし、私は、ずっと普通の会社員でしたし、親の遺産も何もなく、お金はたいして持っておりませんでしたので、株式購入資金は、全額ご融資をいただきました。ですから、MBOを実施したとはいえ、M&Aの専門家が当社の株主構成を見たら、「要するに壹岐さんがLBO(Leveraged Buyout:買収先の資産を担保に資金調達するM&A手法の一つ)を実施して、新しくオーナーになったわけですね。」と言われても仕方のない状態ではありました。

正直に申し上げて、この数年間、これは私にとって大きな重荷でした。ひとつは、個人で多額の借入を負っているということもありましたが、一番重荷だったことは、万一私が死んだら、私の家族がセリオの株式の過半数を相続することになってしまい、前社長の時と同じことが繰り返される可能性があったからです。しかし、セリオホールディングスの株を持ち株会に譲渡し、MEBOを実施するには、まず銀行からの借入をセリオの配当金によって完済する必要がありましたし、他にもクリアすべき事項があり、数年の時間がかかることは覚悟していました。この間、当社が堅実な業績を維持し、MEBOを実現できるような収益を計上できるかが大きな課題だったわけですが、これに関しては、本郷専務や飯田常務ら経営陣と、社員の皆さんのおかげで見事に達成していただけました。

 

MEBO実施

こうした経緯を経て、2020年7月2日、当社は、「セリオ株式会社従業員持株会」を設立し、「セリオ株式会社役員等持株会」とあわせて、セリオホールディングス株式会社の所有株式の全てを取得する形で MEBO を実施し、セリオ株式会社の株主構成は、役員等持株会 82.5%、従業員持株会 17.5% の持分となりました。
MEBOの実施により、私は大きな重荷を下ろすことができて大変ホッとしています。

さて、経緯の説明はこの辺りでやめて、次に、MEBOにはどういう効果が期待されるかについて説明したいと思います。

 

MEBOの目的 とメリットについて

Co-owned companyの実現

冒頭で申し上げた通り、現行の株式会社制度のもとでは、会社の支配者は株主であり、場合によっては経営理念よりも株主の意向を重視する経営を行わねばならないこともありえます。そこで、わが社が「社員の幸福を実現する」という経営理念を貫くためには、完全に独立することが必要であり、これを第一義的な目的としてMEBOを実施しました。

これは、欧米でいうCo-owned company化の実現でもあります。近年、後継者難や株の相続問題等で会社を売り渡したり、廃業したりする企業が増えていますが、我が社にはそういう意味で、株主による一方的な株式売却リスクはありませんし、敵対的な買収による脅威もありません。そういう意味で、これはGoing Concern上、当社の最大の強みであると言えるのではないかと思います。

MEBOのメリットについて

1)Going-Concernのためにリストラを実施しない

現行の株式会社制度のもとでは、Going-Concernのために、株主の意向で業績を重視せねばならず、社員のリストラが当然のように実施されています。しかし、当社では、「社員の幸福を実現する」という経営理念実現のためにGoing-Concern を目指すのであって、Going-Concernのためのリストラなど本末転倒以外のなにものでもありません。これを揺るがないものにするのがMEBOの 実施です。なにせ、社員自身が株主ですので、株主の意向においてもリストラは行えないからです。

2)セルフヘルプ型の組織を支えるオーナーシップカルチャーの醸成

当社は、社員一人ひとりが考えて行動する「セルフヘルプ型」の組織を目指していますが、MEBOにより多くの社員が株主になることによって、社員は経営に一層参画し、適切な危機意識や問題意識、当事者意識を醸成することにより、より自主的に行動し、成果をあげるようになります。つまりオーナーシップカルチャーの醸成が実現し、セルプヘルプ型の経営が強化されます。

3)プロフィットシェアの実現

プロフィットシェアとは、企業収益を社員に還元することです。オーナー会社などでは、業績が計画以上に良かった際などに、特別賞与や決算賞与として支給されることがあります。もちろん当社もそういうことはあり得ますが、MEBOにより株主になると、配当金としての収益還元がえられるようになります。また、長期的に安定した成果を上げ、業績を上げるために、目先の利益を優先することなく、未来を見据え、新しいことへの挑戦ができるようになります。

今年度は、新しい技術開発への挑戦や、よりセキュリティの強化された業務環境の構築などのための拠点開発等への先行投資をしていますがこれもプロフィットシェアです。これが当社の信念である「クオリティファースト」を高めていくことに繋がります。この何事にも束縛されない、自由な経営こそが MEBO のメリットなのです。

 

最後に MEBO実施に期待するもの

社員一人ひとりが責任を果たす集団として、
各々が自分の意志で自分の将来を決めることができる
「選択の自由」を行使し、
「創造の自由」という翼を持って、
セリオのロゴマークに託した想いのように、
より創造的なフィールドへと羽ばたくことができる
企業となっていくことでしょう。

                                    以上