今月も、「SERIO4.0」 と名付けた来期から始まる中長期計画に関連する話をしたいと思います。

昨年来、「近い未来に起きることを考えれば、クリエイティブな人間になることが皆さんの幸せに大きく影響するだろう」という話をしました。それは、デジタル社会に代表される乱気流の時において、AIに代替されない「創造的な仕事」ができるかどうかにかかっているのではないかという問題提起でした。

これまでは、どちらかと言うとテクノロジーの変化に対しての話であったわけですが、今回のお話はもう少し広い視野を持って「日本を取り巻く世界の状況から会社の状況を俯瞰して」みようと思います。3か月前にも少しお話したとおり、米中の貿易摩擦問題、香港の問題等の海外の動きや消費税アップ後の景気動向や働き方改革等様々な国内の変化に対して今後わが社はどのようにかじ取りをしていくかという問題について考えてみたいと思います。

 

私は常々、経営者として私がすべき仕事は、会社のかじ取りをする上での大きな方向づけをすることと、会社の信用を構築することだと考えています反対に、できるだけ、やらないようにしている仕事は、業務の「管理」や「運営」に関わることです。それらは現場をよく知っている優秀な幹部の皆さんにお任せしています。その方が適切な判断ができますし、意思決定のスピードも速くなるからです。

会社の方向付けを考える上では、当然世の中の動きを知っておく必要があります。わが社のような地方の中小企業であっても、世界情勢や国内の経済に対するアンテナはきちんと立てていないといけないのです。

前回の中期計画がスタートする2017年の1月にもトランプ革命が今後世界経済にどういう影響を与えるかという考えを述べました(2017年1月「Think Big!」参照)が、今回もちょうど、次の3カ年計画がスタートする時期ですので、私が普段勉強している範囲ではありますが、皆さんにマクロの世界情勢と今後の景気動向に関する話をしておこうと思います。

≪国際情勢① 米国とイランの紛争≫

先日、「世の中はまさに乱気流の時代に突入した」と話しましたが、お正月早々、それを象徴するようなことが起きました。1月3日、アメリカがイランの革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害するという衝撃的な事件が発生したのです。

そのニュースをみて3年前に公開された「アイ・イン・ザ・スカイ」という映画を思い出しました。この映画は、現代の戦争はこうして起きるのだということを暴露するような映画でした。どういうストーリーかと言うと、イギリス軍の情報部隊がアフリカにいる国際的テロリストをドローンで四六時中監視しているうちに、大規模自爆テロの情報をつかむのです。そして、このテロリストを暗殺すべきかどうかを遠く離れたイギリスやアメリカの指令室や会議室で各国の色々な思惑を絡めて検討する過程を描くのが映画の前半です。

後半では、米国のドローンパイロットに攻撃命令が降るのですが、テロリストにミサイルを発射した際の殺傷圏内に幼い少女がいることが判明し、その少女を犠牲にしてでもテロリスト殺害すべきかどうか、果たして少女は助かるか否やというスリルとサスペンス満載の映画になっていたと思います。また、この映画は、戦争における正義とは何かを問うシリアスな作品でもあったと思います。興行的にはあまりヒットしていなかったようですが、実に面白い映画でした。

近代の戦争でITはこのように使われるということを理解する上でもとても参考になる映画でしたが、今回のソレイマニ司令官殺害もきっとこの映画のような感じで意思決定されたのだろうなと思った次第です。

 

話がそれてしまいましたが、お正月早々トランプ大統領がいきなり中東に軍事行動を起こしたのには世界中が震撼したのではないかと思います。

私が知っている情報を整理すると、一昨年のイランの核合意離脱を受けて、昨年5月くらいからアメリカはイランに原油輸出を禁ずるという経済的には非常に強硬な制裁措置を講じました。その直後、安倍首相がイランを訪問した際に日本のタンカーが攻撃されたり、国連でトランプ氏とロウハニ大統領が面談しようとしていた矢先にサウジの石油施設が攻撃されたりする事件が起きて、アメリカは、その首謀者がイランであると言っていました。しかし、そんなことをしてもイランに何の得もないことなので、これはイランを悪者にしようとするアメリカの自作自演だったのではないかという謀略説も流れていたように思います。

その後イランは、アメリカによる経済制裁の影響で、自国通貨が暴落し、前年比40%以上のインフレに見舞われ、GDPが年率10%近く落ち込むなど経済的に苦境に陥っています。国民は政府に対して経済問題をなんとかせよということで大規模なデモが起きていたのが昨年末ごろの状態であったと思います。

軍事的には、昨年暮れに、イラク領内の米軍施設がイラク・シリアの民兵組織によって攻撃され、アメリカの民間人がこれに巻き込まれて死亡するという事件が起こりました。この民兵組織に武器を与え、指揮を執っていたのがイランの革命防衛軍の特殊部隊コッズだったわけです。米軍はこれに対して報復する動きを示していたわけですが、年明け早々、イラク国内の民兵組織と接触していたソレイマニ司令官がいきなり殺害されたわけです。

アメリカ側から見れば、イラクやシリアの民兵組織に武器を与え指揮を執るイランの軍事指導者というのは、悪質なテロリストを陰で支援する存在であり、これを抹殺したのだというのが大義名分だと思います。しかし、イランという国自体は、パーレビ国王を追放したホメイニ革命以降、たしかに親米路線を取らなくなりましたが、北朝鮮のような独裁国家ではなく、選挙で大統領を選ぶ民主主義国家として生まれ変わっています。現在はロウハニ大統領がその任にあるわけですが、彼はきちんとした選挙で選ばれた大統領で、王族でも世襲でもありません。また、イスラム国家は、様々な宗教的戒律に縛られた非近代的国家というイメージもありますが、イランという国はイスラム教シーア派を代表する正統な宗教国家であり、国民の多くは自分の意思で宗教的信条を守っているのです。宗教指導者のハメネイ師は、神の意思を受け取る立場にあるという意味で国の最高権力者ではありますが、その宗教指導者が独裁するような国家運営をしておりません。

そんな国が、本当に米国の言う通りテロリスト支援国家なのかどうかは疑問の残るところではあります。個人的には、今のイランが先の大戦における日本と同じように感じられて仕方がありません。当時、日本は、ヒットラーのような天皇が支配する狂信的な侵略国家だと思われていました。そして、戦争に負けた後、日本人はそういう彼らの価値観を押し付けられて今では日本人が一番そう信じているところがあります。しかし、天皇は日本神道における最高権力者ではありましたが、ヒットラーのような存在ではありませんでしたし、日本は狂信的な侵略国家ではありませんでした。

従って、今回もイランは、太平洋戦争当時、日本が石油の輸入を封鎖され、米国との開戦に追い込まれたのと同じような背景があるかもしれません。

私は、イランという国が狂信的なテロリスト支援国家であると一方的に思い込むのはどうかと思います。イラクの民兵組織の軍事行動も、大国から経済制裁をくらった小国ができる精いっぱいのゲリラ的反発だったのかもしれませんが、現時点では何が真実か定かではありません。いずれにせよ、彼らは米国の思惑に反したことをし続けているわけです。

今回の一方的なソレイマニ司令官の殺害はイラン国民の怒りを爆発させました。その後イランは米国への報復措置として米軍施設を攻撃しましたが、死傷者は一切出ていません。ややこしくなったのは、イランがウクライナの旅客機を誤爆して撃墜してしまったことです。このため、現時点で、トランプ大統領がロウハニ大統領と面談し、平和解決への道を模索するという状況は遠のいたというべきでしょう。

 

話をもう少し俯瞰してみると、これまで、中東はイスラエルとサウジアラビアという親米的な国とイラン、イラク、シリアなどの反米的な(中国・ロシア寄り)の国が宗教的にも軍事的にも対立する図式になって来ていました。9.11やその後のイラク戦争、ISの問題などもありましたし、当然、中東の石油は、当然中国経済や欧州経済にも大きく影響を与えるわけで、中国が一帯一路の覇権国家路線を実現する上でも中東は大きな鍵を握っているわけで、アメリカがこれを阻止しようとする思惑はあるわけです。

また、イスラエルとの関係は同国の建国以来複雑ですし、イスラエルは核武装しているのになぜ自分たちはダメなのだというのがイランなどの言い分でしょう。更に同じイスラム教国であってもスンニ派の代表であるサウジアラビアとシーア派のイランは大変仲が悪く対立していることなども絡み合って、今後とも一触即発の状況が続くと思われます。これが中東情勢に関することです。昨年は、北朝鮮問題だけだったのが、今年は中東にも大きな戦争になりかねない火種が出てきたわけです。

 

≪国際情勢② 台湾総統選で蔡英文総統が圧勝≫

今年は、始まってまだ2週間ですが、国際的には大きなことが矢継ぎ早に起きました。それは、台湾の総統選、議員選挙で祭英文総統と民進党が予想をはるかに上回る得票数で圧勝したということです。これは明らかに香港の二の舞になりたくないという台湾国民の意思表示であったと思います。少し前までは、かなり中国経済依存の流れが出ていて、再選は厳しいという観測がなされていたので中国政府はショックだったと思います。今回の選挙に際して、習近平政権は台湾への旅行を禁じたり、中国取引をする企業への経済優遇策を打ち出したり、メディアで対立候補の映像しか映さなかったりして露骨なネガティブキャンペーンを繰り広げていたわけですが、結果はまったく逆になったわけです。

そういう意味で、香港市民による中国からの独立と自由を求める運動は大きな影響があったと言わざるを得ません。香港の人は、一時は中国に飲み込まれるか、逃げ出すかの二つの選択しかなかったような感じでしたが、若者を中心に多くの市民が中国政府の圧力に屈せず、自由を守るために命懸けで戦うという選択をしました。そして、この動きに台湾も影響を受けたわけです。

ニュースなどを見ていると、日本のマスコミは、中国に遠慮して、香港のデモを昔の日本の学生運動のように矮小化して伝えようとしているようでなりませんが、起きていることの本質は全く違います。この運動の背景には、全体主義国家化し、一国二制度などなし崩しにしようとする習近平政権への強い反発があるわけです。

「全体主義の起源」などの著作で有名なユダヤ人の政治哲学者ハンナ・アーレントによると、全体主義国家の定義は、①強制収容所があること、②粛清があること、③警察国家であること=監視社会であることの三点ですが、現在の中国はこれを兼ね備えています。

最近、朝日新聞などでも報道されていますが、中国のウイグル自治区、東トルキスタンでは、300万人ともいわれる大量のイスラム教徒が強制的に収容所に入れられており、唯物論教育を強制されていると言われていますし、数十万人規模での粛清がおこなわれているとも言われています。

また、中国は人口が14億人を突破したとのことですが、監視カメラは2億台を超え、今年には二人に1台の割合で、約7億台が設置されると言われています。買い物はすべて電子マネーでしか買えない状況なので、誰がどこで何を買ったか、どこで何をしたかは、すべてログがとられ、人々の生活や言動が全て当局に筒抜けになっています。IT企業は実質国営化される方向にあり、OMO(Online Merges with Offline)によって、完全なAI(電脳)監視国家が作り上げられようとしています。

ちなみに、旅行で中国に行くと、観光バスに乗る際に、乗客も必ずシートベルトをつけるよう指示されます。なぜなら、一人でもシートベルトを着けていないと、それが監視カメラにチェックされ、後日強制的に罰金を口座から引き落とされる仕組みになっているからです。そういう風に、いつどこでだれが何をし、何を言ったか、すべての言動が国に監視されているわけで、多分政府の悪口など言おうものなら大変なことになるのではないかと思います。もちろん言論の自由も表現・出版の自由もありません。

香港市民はそういう国に呑み込まれることに反発し続けていますし、台湾国民もその流れにNOをつきつけたわけです。香港市民が行っていることは、非常に勇気のいることで称賛に値することだと思います。この動きが中国本土に飛び火するかどうか。もしそうなった場合、中国政府はどう出るのかが今後注目されるところだと思いますし、もちろん、中国による沖縄への侵略圧力がどうなるのかも注視されます。

 

≪国際情勢③ ・米中貿易摩擦後の両国経済≫

3年前にも指摘した通り,トランプ大統領が、中国との貿易赤字を縮小するための施策を打ち出した背景には、中国経済が異常な速さで成長し、彼らはその経済力で軍事力を強化し、覇権国家化する動きを阻止する意図があったわけですが、これはアメリカの思惑通りに進んでいるように見えます。

中国経済は、日本をあっという間に抜き去りGDP12兆ドルの経済大国になりましたが、減速傾向にあるのは間違いありません。従って、一帯一路路線も変更を余儀なくされる可能性が高いと思われます。直接日本経済に与える影響としては、インバウンド消費が大きく落ち込む可能性があります。すでに中国政府は人民元の下落を防止するために海外での高額な買い物に課税を始めていますし、日本で安く仕入れたものを中国内で転売することに対して課税を強化するなど、インバウンド客の消費も規制し始めています。この事からも中国経済が下降局面に入っていると言えます。従って、中国経済やインバウンド客に過度に依存する業種や取引は注意しないといけないでしょう。また、中国経済の減速に伴い資金援助している国へ返済を要請する可能性も出てくるでしょう。すると、そうした国々との間で新たな軋轢を生む可能性も秘めています。

一方の、米国経済は、極めて好調で、年初来株価も高値を更新していますが、米国のアナリストたちの間では、引き続き好況を維持するという見方が強いようです。これは「トランポノミクス」と言われる経済政策が功を奏したからです。トランプ氏は中国に頼らず、自国の経済政策で大きく経済成長できることを証明しました。その中心は大幅な所得減税と法人減税や加速償却等の税制改革です。低金利政策と大減税によってGDPは19兆ドルに成長し、失業率もほぼゼロに近い数字が出ています。株価は連日最高値を更新し、住宅着工件数も過去最高を記録するなど、好景気が続いています。弾劾裁判など微妙な要素はあるものの、トランプ大統領は再選を目指してもう一段大幅な減税を打ち出すことが予測されています。

欧州経済では、「Brexit」(イギリスのEU離脱)がいよいよ実行段階になるでしょう。ジョンソン首相はサッチャーやチャーチルの路線を引き継ぎ、イギリスファーストで考えているようですが、これについては、また別の機会にお話します。

 

≪日本の景気動向≫

次に、我が国の2020年以降の景気動向を考えてみたいと思います。

経営者の多くは、今年はオリンピックがあるから大きく落ち込みはしないだろうが、その後は企業業績も下降局面に入り、消費税引き上げの影響で個人消費にも陰りが出てくるのではないかと考えていると思います。ちなみに、2019年7‐9月の名目GDPは伸びましたが、これは消費増税前の駆け込み需要の影響があったからです。増税後の2019年10-12月、2020年1-3月がどうなるか発表を待ちたいところではありますが、政府はキャッシュレスの5%還元キャンペーン等で落ち込みを何とかしのぎ、東京オリンピックまで景気好調を維持しようとしているのではないでしょうか。

そもそも日本は過去最長の経済成長を持続していると言われていますが、GDPの成長率は2四半期期連続でマイナスになっていないだけの横ばいで、規模としても550兆円(5兆ドル)しかなく、アメリカや中国に大きく水をあけられていますし、人口も増えていません。

前回の消費増税でせっかくのアベノミクス効果も帳消しになったのですが、企業業績が良かったこととインバウンド特需があったことで景気は悪化しなかったのです。

しかし、これからは、国際情勢とも相まって、企業業績にも陰りが生じてくると思います。その象徴するような記事が昨日出ていました。

昨日の(2020年1月13日)日経新聞の朝刊トップに、「黒字リストラ」拡大、デジタル化に先手という記事が掲載されていました。内容は、到底これから景気が良くなると思わせる記事ではありません。(以下記事抜粋)


好業績下で人員削減策を打ち出す企業が増えている。2019年に早期・希望退職を実施した上場企業35社のうち、最終損益が黒字だった企業が約6割を占めた。これらの企業の削減人員数は中高年を中心に計9千人超と18年の約3倍に増えた。企業は若手社員への給与の再配分やデジタル時代に即した人材確保を迫られている。業績が堅調で雇用環境もいいうちに人員構成を見直す動きで、人材の流動化が進む。

「黒字リストラ」で目立ったのが製薬業界だ。中外製薬は18年12月期に純利益が2期連続で過去最高を更新したが、19年4月に45歳以上の早期退職者を募集し172人が応募した。アステラス製薬も19年3月期の純利益が前期比35%増えるなか3月までに約700人が早期退職した。

高度技術を持つ人材や若手を取り込むため、高額報酬で競い合う構図も鮮明だ。NECは19年3月までの1年間に約3千人の中高年がグループを去る一方、新入社員でも能力に応じ年1千万円を支払う制度を導入した。富士通も2850人をリストラしたが、デジタル人材に最高4千万円を出す構想を持つ。

年功序列型の賃金体系を持つ大手企業では、中高年の給与負担が重い。厚生労働省によると、大企業では50~54歳(男性)の平均月給が51万円で最も高く、45~49歳も46万円だった。昭和女子大学の八代尚宏特命教授は「人手不足に対応するには中高年に手厚い賃金原資を若手に再配分する必要がある」と指摘する。

今年もこの流れは強まる見通しだ。味の素は20年1月から50歳以上の管理職の1割強に当たる100人程度の希望退職者を募集。20年に早期退職を実施する予定の企業は足元で9社(計1900人)あり、うち7社が19年度に最終黒字を見込む。


「人を大切にする経営学会」の会員が見たら激怒するような記事です。

(※坂本会長はこの記事に関するコメントを夕刊紙のコラムに執筆されました。特別にその生原稿をいただくことができましたので、文末に添付させていただきます)

この記事は黒字企業の中高年リストラを批判するどころか、奨励するニュアンスで書かれています。まさしく、こういう記事が正月早々紙面のトップを飾っていることが、日本経済のトレンドを意味していると思います。先の景気悪化を見越して、業績が黒字のうちに不要になった中高年の社員に退職金を積み増しして退職や転職を促す対策をとることが賢明だということです。こういう経営方針を打ち出す経営者は自分が高い給料を取ることが恥ずかしくないのでしょうか。実に許しがたいことであると思いますが、記事はむしろこれを正しい経営であると奨励しているように思えます。

これは、働き方改革以前の問題です。2020年は、40歳台、50歳代の働き盛りのサラリーマンにとって新たな受難の時代の幕開けでもあるということです。人生100年時代において、50歳はまだ折り返し地点にすぎません。50歳代の多くの幹部社員が、たとえリストラはされなくても、役職定年で給料は下がり、雇用延長で更に収入は激減し続けていくのです。この間、子供の教育費は増え続け、家のローンは払い続けなくてはいけません。家族に病人が出たり、親の介護が必要になったりする世代でもあります。ところが、年金は当分もらえませんし、給料が下がれば老後のために最低必要と言われる2千万円など貯めることはできないでしょう。経済的不安は募り、ストレスがたまるばかりでしょう。業績のいい会社ほどリストラが加速するとは何と皮肉なことでしょう。苦労して勉強し、他の人を押しのけていい学校、いい会社に入り、会社のために人生を捧げてきたのは、一体何のためだったのでしょう。そういう時代において、会社は何をどうすべきかが今後の大きな論点でもあるでしょう。

また、それとは別に、2020年以降、これまで世間から「いい会社」であると思われていた会社が、大量に消滅するかもしれません。その代表格が銀行…特に地方銀行であると私は思います。日銀のゼロ金利政策が長く続いていますが、経営的に一番影響を受けているのは銀行です。特に、地方銀行は預金と貸付の利鞘と国債の運用で収益を確保していたわけですが、ゼロ金利政策により収益源がない状況です。

日本の銀行のPBR(株価純資産倍率)は平均で0.4倍であり、この数字を見れば、銀行は存続そのものが危ういことを示しています。PBRは株価を一株当たり純資産で割った値ですが、要するに今その会社を清算したらいくらになるかということです。例えばA社が100万円の資産を持っていたら少なくとも100万円の価値がある会社と言えるでしょう。しかし、現在のPBRから見ると日本の銀行は100万円の資産を持っていても、40万円の価値しかないことになっているのです。一番少ないところでは10万円の価値しかないところもあります。日経新聞にも頻繁にそういう記事が掲載されていますし、時価総額が低くなりすぎて東証一部上場から外されそうになっている銀行もあります。

かたや、ベンチャー企業やスタートアップ企業の中にはPBRが200倍の企業も多くあるのですが、銀行はそういう会社が育っていく際になかなかお金が貸せません。相変わらず過去の業績や返済余力、担保があるかどうかでしかお金が貸せないからです。これは金融庁がそういう風にお金を貸しなさいと指導しているので仕方がないのです。実に気の毒なことですが、個人的には、地方銀行の8割はいつなくなっても不思議ではありませんし、メガバンクも半分でいいと思います。

前回お話した2025年の崖に向けて今年は銀行も大変な時代になっていくでしょう。従って、取引先として銀行に依存し過ぎている企業も気を付けるべきでしょう。

また、働き方改革の影響もあり、正社員と派遣社員の区別がなくなってきたり、副業が認められて来たりして、会社で働くことの意味が変わってくる時代にもなるでしょう。人手不足は加速し、コンビニも時短営業や正月休業等の問題がでてきて、撤退する店も増えています。この間まで出店ラッシュを続けていたセブンイレブンですら1000店閉鎖するとの話もありますし、大手の百貨店も閉店するところが出てくるでしょう。

ということで、国際情勢と日本経済の現状をざっと俯瞰してきましたが、昨年来申し上げている通り乱気流の時代にいよいよ突入したということです。

わたしたちは、乱気流の時代に躍進していきたいと思います。

そのためのキーワードはやはり「セルフヘルプの精神」であると思います。

人生100年時代に躍進する人間になるには、何歳からでも新しい努力を開始し、新しい能力を身につけ、新しい仕事にチャレンジする人間に変化することです。

気を付けてほしいことは、たとえ環境が大きく変化しても、あなた自身が変化しなければ何も変わらないということを知っておいてください。

大事なことは、あなた自身が、あなたがなりたい変化そのものになることです。

未来とは、あなたがなしとげた変化であり、あなたがなしとげた変化のみがあなたの未来なのです。

そういう未来を描くための中期計画にしていきたいと思います。

どうぞよろしくお願いします。 

(※参考)坂本会長のコラム生原稿 

            黒字リストラ問う

 

 希望退職者を募集する。つまり、リストラをする大企業が、最近、再び増加している。よりひどいのは、そのうちの約60%は黒字企業、なかには、前年比10%どころか30%を超える程、好業績の企業も存在する。

  赤字企業のリストラも許しがたいが、より問題なのは、黒字企業のリストラである。いかなる理由があるにせよ、こうした正しくない・お天道様に顔向けできないような経営を行う企業が多数派である限り、わが国経済はもとより、社会の未来も危うい。

 それは、本コーナーで筆者が繰り返し述べているように、企業経営の最大・最高の使命・目的は、5人の幸せの追求・実現である。そして、とりわけ重要かつ大切な人は、社員とその家族だからである。

業績も勝つことも重要ではあるが、それはあくまで使命・目的である社員とその家族の幸せの実現のための、手段・結果としての重要度に過ぎないのである。リストラをされた社員や、その家族で幸せを実感できる人など世界中に誰一人としていないからである。

 このことは、会長・社長をはじめとした役員が、「自分自身が社員だったら…とか、自分自身が社員の家族であったら…」と考えれば、よく分かることである。

 筆者はよく、「社員であった頃のことを忘れた人が、たまたま会長や社長、さらには役員になると、ろくなリーダーにならない…」という意味がこれである。

 ともあれ、こうしたリストラを平然と行う企業に怒りを覚えるのは、これら大半の企業の会長・社長、そして役員は、リストラをお詫びするどころか、あたかも自身の成果のように誇り、依然居心地のいい椅子に座り続けているという点である。

 加えて言えば、これら企業の大半の役員報酬は5000万円以上、なかには1億円どころか3億円以上の役員も存在しているという点である。わが国就業者の平均が約400万円前後であることを踏まえると、想像を絶する報酬と言わざるを得ない。

 例え話で恐縮ではあるが、もしも筆者が、これら企業の役員であったならば、黒字企業のリストラはあり得ないが、赤字企業であったとしても、その場合は、自分の報酬を大幅(社員並み)に下げ、一人でも多くの社員とその家族の命と生活を守る決断をすると思われる。

 もとよりそれは、誰が考えても、そうした経営が正しいからであり、自然の摂理に合っているからである。

長い歴史を調べてみると「正しい経営は決して滅びない…、欺瞞に満ちた経営・誰かの犠牲の上に成り立つ経営はやがて滅びる…」のであり、このことを心すべきである。