『令和』の幕開けは乱気流時代

今年もあと二ヵ月を残すのみとなってきましたので、今年を振り返ってみたいと思います。

何といっても、今年は元号が変わり『令和』の時代に入りました。10月22日には、新しい天皇陛下がご即位を宣言される「即位礼正殿の儀」が執り行われました。その日は国民の休日になり、国内外から様々な方がお祝いをするというおめでたいことがありました。また、ラグビーワールドカップでは日本チームの大活躍に国中が熱狂しました。令和の時代は明るいスタートであったようにも見えます。

一方、今年は、台風襲来で想定外の被害がもたらされました。9月の台風15号では、強風で千葉県を中心に大きな被害が出ました。風でゴルフ練習場のポールが倒れて近隣の家が破壊されるというとんでもないことが起きましたし、停電になって何週間も復旧しないということが起きました。いくら大きな台風とはいえ、首都圏の「電力供給」体制がこれほどぜい弱だとは思いませんでした。翌月の台風19号の時は、通過が予測された地域の人たちは前回のような強風を警戒しました。神奈川にある私の自宅でも窓にガムテープを貼ったりしていたのですが、今度は雨でした。これも予想をはるかに上回る被害が出ました。長野や千葉、群馬、栃木、宮城など広い範囲で70もの川が氾濫し、140か所で堤防が決壊するなど甚大な被害をもたらしました。気の毒だったのは、台風が通り過ぎてもう収まったと思ってから上流にたくさん降った雨で下流の川の水かさが増したため、川が氾濫して亡くなられた方がいらっしゃったことです。空中から撮影した映像を見ていると、私が子供のころ、まだきちんと堤防などができていない時代に見た映像のようで、本当にこれは『令和』の時代のことなのだろうかという感じでした。さらに、その被害が冷めやらぬ中、沖縄では突然、世界遺産の首里城が炎上するというショッキングなニュースが飛び込んできました。

国内の経済政策をみると、「働き方改革」ということで、仕事を長くするのはやめて、もっと休みなさい、早く帰りましょうということを政府が制度化しました。そして、10月には消費税が10%に上がりました。個人的には、税金を下げるから安心してたくさん休みなさいというのは理解できますが、税金は上げるけど休めというのには、それで本当に大丈夫だろうかという気はしないでもありません。

世界に目を向けると、ご存知の通り、米国・中国の貿易をめぐる対立は依然収まる気配がありません。また、中国関連では、香港のデモが過熱しています。7月に本郷常務と深圳と香港に視察に行ったのですが、そのころはまだのんきに香港の市内観光などもできたのですが、その後デモが過熱化し、今だったらとても行ける状況にはないと思います。また、北朝鮮は、相変わらず飛翔体と称するミサイルを発射していますし、お隣の韓国では、徴用工問題以降、異常なほど反日政策が活発になっています。日本製品の不買運動や安倍首相を糾弾する集会なども開かれているようです。韓国と取引のある会社には売上等にも影響が出ていますが、それ以上に韓国経済は深刻な状況にあるという話も聞いています。

こうして振り返ってみると、おめでたいこともありましたが、大きな災害や異変もあり、国内外のできごとを見るにつけ、『令和』の幕開けは何が起きるかわからない「乱気流の時代」であるといえるのではないかと思います。そこで、今日は、これからも続くであろう乱気流時代を生き延びるための知恵というテーマでお話しをしたいと思います。

 

乱気流時代を生き延びるにはどうしたらいいか?という問いに対して、ドラッカーは明確に4つの指針を述べています。(ダイヤモンド社刊『われわれはいかに働きどう生きるべきか』第8章「乱気流の時代を生きる」参照)

何もドラッカーがいうことは何もかも正しいというつもりはありません。しかし、私が、数十年間、色々な本を読み、実際に経営をしてみて、この本の中で、ドラッカーが分かりやすい言葉で言い切っていることが、極めて理にかなっていると思ったので、それをご紹介したいと思った次第です。

 

Managing In Turbulent Times(乱気流の時代に生き残るための4つの知恵)

  1.資源を機会に集中すること

  2.資源の生産性を上げること

  3.成長をマネジメントすること

  4.人の育成に注力すること

 

この4項目の私たちが心がけるべきことについて今日は話したいと思います。

 

1.資源を機会に集中せよ

ドラッカーは次のように言っています。

 

自らの資源、エネルギー、時間、人財を“真に重要なもの”に集中せよ

機会を追求するために、脂肪を削ぎ落とせ

 

これは、変化が激しいときや何が起こるかわからないときほど、また弱者であればあるほど肝に銘ずべきことではないかと思います。さらに、これは会社だけではなく個人にも言えることだと思います。あれもこれも手を出すのはやめ、最も重要なことに集中せよ、絞り込めということです。別の言い方で言うと、持てる強みを一点に集中せよということだと思います。

会社には、お金、時間、人など、色々な資源がありますし、皆さん一人ひとりも同様の資源を持っていますが、その持っている資源を一点に集中しなさいということです。

そして、どこに集中するかというと“真に重要なもの”に集中せよと言っています。

従って、何が真に重要なことか、先ずはそれを見極めることが一番重要なことであり、難しいことでもあるでしょう。そのために大事なことは、先ず、“真に重要なもの”とは何かを考えつづけることだと思います。そして、実際に、これだと決めたなら、他を捨ててでもそのことに集中することであると思います。

個人レベルの話では、自分の自由になる時間をどう使うかということでしょう。皆さんの中にも、時間があるとスマホをいじっていたり、テレビを見たり、ゲームをやっていたりする習慣がついている人はたくさんいると思いますが、それは“真に重要なもの”に時間という貴重な資源を集中しているとは決して言えないでしょう。たまに気分転換にゲームをするならともかく、その細切れの時間をもっと有意義なことに振り替えることもできたはずです。自分にとって大事なものは何か、それに対して時間やエネルギーをどう配分するかを考え、実践している人と実践していない人には時間が経てば経つほど大きな差が生まれるということです。乱気流の時代に生き残れるかはまず、ここにかかっているということではないかと思います。

 

また、機会を追求するためには、脂肪をそぎ落とせと言っています。同じことですが、大事なものに集中するためにはそうでないことをやめなさいということです。これは、特に仕事において言えることです。もし、あなたが、真に重要でないことに時間をかける癖がついていたら、すぐにやめるべきです。というのは、先月も言いましたが、これまでずっとやってきたからこれからも惰性でやるという現状維持の発想が最もイノベーションを阻害するからです。これは決して他人ごとではありません。皆さん自身の日常業務に当てはめて、自分は本当に重要なものに時間を集中しているかどうか考えてください。

 

ここで、先日訪問した会社の創業者の方の事例を紹介します。

先日、豊田市の郊外にある、加茂精工株式会社という精密部品を製造している会社を訪問してきました。色々な工作機械で精密部品を削りだしている会社だったので、製造システム第一本部の社員と一緒に行ったのですが、周りにはゴルフ場しかないところで、よくまぁこんな山奥に工場を作ったものだという印象でした。

ご担当の方から工場内をくまなくご案内いただいた後で、創業者であり、同社の製品を発明した発明家でもある今瀬憲司会長からお話を伺いました。

こちらの会社にお邪魔しようと思ったきっかけは「人を大切にする経営学会」の中部支部のセミナーで今瀬会長のご講演を拝聴したからです。会長は岐阜県美濃加茂市のご出身で、加茂精工という会社名もご自分の出身地にちなんだものだそうです。1964年に工業高校を出た後、愛知県内の自動車部品メーカーに就職し、機械設計を習得されたそうです。その後、言われたことだけをするのに耐えられなくなって独立し、1977年に自宅で小さな設計事務所を開業したそうです。そのころの仕事は、部品メーカーから仕様書をもらい、それを設計図に起こすという創造性のない仕事でした。食べていくためには仕方がないとはいえ、自分はオリジナルの設計がしたくて独立したのに、一生このままではいけないと一念発起して、自社製品を開発して自主独立のメーカーになることを目指し、1980年に加茂精工を設立したそうです。道は険しかったそうですが、試行錯誤を繰り返し、1986年にボール減速機を開発、その後も多くのオリジナル機械部品を開発し、海外でも特許を取得して、現在では従業員80名ほどの開発型部品メーカーに成長しています。2016年にはNHKの『スゴ技(わざ)』という番組で、単三電池たった3個で小さなモーターを回し、歯車の性能で冷蔵庫を持ちあげられるかという対決をして見事勝利するなどして紹介されたそうです。

会長は『小さな工場のものづくり魂』(幻冬舎刊)という本を出されています。この本の中に現状維持で凝り固まった下請け企業の実態を描く次のような一説があります。

下請けメーカーは「この厳しい時代に少なくとも食べてはいける。仕事がないよりはマシ。」と考え、目の前の仕事をこなすことに精一杯になります。

その結果、新規取引先の開拓や新製品開発などに取組む余力がなくなり、「思考停止」した状態になってしまいます。

この「思考停止」状況は、発注先にとっては好都合。「思考停止」した下請け先であれば、自社の要求に従順に対応してくれるので扱いやすいからです。

しかし、ひとたび景気が悪くなれば簡単に切り捨てられ、倒産や廃業の憂き目に会うのです。少ない利益で十分な体力もつけられず、滅私奉公しているだけでは明るい未来が見えるはずはありません。

目の前の仕事ばかりをして、思考停止になっていると、大きな変化が来た時に生き延びることができなくなるということです。以前、ワイルドダックという話(理念本セリオ第2巻参照)をしました。渡り鳥のカモであっても湖で永年餌をもらい飼いならされると、飛べなくなってしまう。ワイルドダックでなくなると、大雪が降って湖の水かさが増しただけで生き延びていけなくなるという話です。今瀬会長は、このワイルドダックではなくなった状態こそ、自社の利益しか考えない発注先にとっては大変好都合なのだとおっしゃっています。なぜなら、「思考停止」になった下請け先ほど扱いやすいものはなく、自社の要求に従順に、多少理不尽なことでも、言った通りに一生懸命やってくれるからです。

「思考停止」状態になるとはそういうことです。わが社の兄弟会社で、今はセリオデベロップメントと名前を変えましたが、以前の東洋電器という会社はまさにそういう会社でした。長年、自社設備も持たず、技術者も育成せず、ひたすら大手メーカーの注文にこたえることだけを考えて仕事をしていたと思います。パナソニックやシャープの下請けをしていたのですが、まさにひとたび景気が悪くなれば簡単に切り捨てられ、倒産や廃業の憂き目に会う”ことになりました。

発注先の急な業績悪化や景気の変動などは、先ほど申し上げた千葉の台風や長野の千曲川の氾濫よりも確率は高いと考えるべきでしょう。私が何を言わんかとしているかというと、中小企業経営において「思考停止」状態ほど恐ろしいものはないということです。その理由を会長はご自身の著書にこう明確に書いておられます。

低コストを売りにする発注先は、他社との競争に勝つため、下請け先に今まで以上の「コストダウン」と「納期短縮」を要求します。結局、好況時も不況時も下請け企業は、常にこの課題から逃れることはできず、やがてこの終わりのないレースに疲弊してしまいます。

大手から押し付けられた仕様書どおりに、言い値で、納期どおりに作っても、品質が担保されるわけではありません。こんな「官僚的なものづくり」をしていては、ワクワクなどするはずがありません。

変化の大きな時代だからこそ、「自分の会社の未来は自分で切り開く」という気概を今まで以上に持って臨まねばならないのではないでしょうか。

“真に重要なこと”は、他社にマネのできないような品質の良い成果物やサービス、ソリューションを提供することでしょう。ところが、発注先から“真に重要なこと”は、言われた通りに「コストダウン」や「納期」を守ることであり、常にそれを優先することだと教えられ、そこで頭が「思考停止」してしまった企業には、注文通り、寸分たがわず作ることが最高の「品質」だとしか考えられないのです。

 

SERIO4.0のテーマは 脱・「思考停止」のススメ

前回、わが社がセリオ4.0を合言葉に次のステップにイノベーションするにはクリエイティブになること(Be Creative!)キーワードだという話をしましたが、それは「思考停止」から脱却し、自分の頭で考えて自分の未来を切り開こうということです。

皆さんは未来工業という会社の名前を聞いたことがありますか。「日本でいちばん大切にしたい会社」にも選出され、坂本先生の本やいろいろなところで紹介されていますが、山田さんという方が創業した岐阜県にある有名な会社です。この会社には、会社中に“常に考える”という言葉が書いてあるのですが、以前訪問した際に、それが標語でもスローガンでもなく、この会社ではごく当たり前のことになっているように思えました。加茂精工さんも未来工業さんも、“常に考える”ことが仕事の中心概念になっている会社であり、“真に重要なこと”に集中している会社です。

 

脱・「思考停止」を実践するには、“真に重要なものは何か?何を取り、何を捨てるべきか?”を考えて、考えて、考え抜くことです。ただ漫然といつもと同じことをしたり、言われた通りに仕事をしたりしているだけではいけません。たとえば、何かの機会に他の会社を見学することもあると思いますが、単にどんな風に何を作っているかということを見るだけでなく、その会社にどんな風土が育成されているかどうかを見ようとするといいでしょう。そういう目に見えないものが見られるようになることも考えを深めるためには大事なことだと思います。

あと、最近とても気になるのが、いつの間にか「コピペ」を習慣化している方が結構多いのではないかということです。コピペ文化に染まることは、典型的な「思考停止」パターンでしょう。以前、会議の時に、本郷常務が、本当の意味で技術者が育たない原因としてそれを指摘していたと思います。「最近、自分で考えてコードを書いてない。どこかでコードをさがし、それをコピペして使っている人が多い。だから自分の頭で考えることのできる技術者が育たないのだ。」と言っていたと思います。大学の論文などもそういうのが多いそうです。皆さんも、インターネット等からかコピペして仕事が終わったように思っているとしたら厳しく自戒して、習慣を変えないといけません。それは、やってみれば難しいことではないはずです。最初は戸惑うかもしれませんが、どうすればもっと良い成果が出せるかを考え続けていくうちに面白くなり、気が付くと24時間考える癖がついてくるはずです。行き詰ったら、イノベーションして、それまでのやり方を捨てることです。そうして毎日毎日考え続けていくうちに創意工夫する力が現われてくるのです。これが、ドラッカーが指摘する乱気流を生き延びるための一番目の心得です。

 

2.資源の生産性を上げよ

二番目に、ドラッカーは、

資源の生産性を上げよ。

あらゆる資源の生産性が危機的な状況にある。

あらゆる資源が不足する

と述べています。

下の数字は何の数字かと言うと、ある「キーワード」が掲載された日経新聞の記事の数の推移です。

2011年に89件だったのが、2018年には4336件と急激に増えていますが、皆さん、その「キーワード」が何であるかわかりますか?

それは「人手不足」という言葉だそうです。

ドラッカーは、もっと何年も前に「あらゆる資源が不足する」と言い切っていたわけですが、その予言どおり、まさに現代は人財という資源が不足する時代になっていると言えるでしょう。

 

しかし、最近の人手不足は、これまでのような単純な人手不足ではありません。それは、人出不足と言われている反面、AIの普及によってなくなる仕事もたくさんあるからです。例えば、先日もある大手銀行の役員と話をしていたのですが、その方は「最近は人出不足で困っている。いい学生が全然採れないし、採ってもすぐ辞めてしまう」と言っていました。しかし、一方で、その銀行では、今後数年以内に一万人単位で人員を減らすことを公表しています。それは、キャッシュレス化を進めたり、形式的なローン審査のようにAIがしたほうが間違いなくできることはAIにやらせたり、フィンテックを駆使した業務改革を行ったりすることで、そういう業務に従事していた社員が要らなくなるからでしょう。

つまり、一言に人手不足と言っても、有用な人財という意味での人が不足しているということで、AIに取って代わられるような仕事をしていた人は逆に不要になっているのです。

 

これから起きる深刻な事態は、これまで有名大学を卒業した方々がやっていた知的業務と言われていた仕事の多くをAIが代替してしまうことでしょう。皆さんも、どこかで今後10年間にAIに代替される職種100とかいうリストを見たことがあると思いますが、かつて工場にロボットや自動生産の機械が導入されたときに、ブルーワーカーが大量に失業したのと同じことが起きることもあり得るのです。すでにある大手コンピューター会社では、AI人材を年収数千万円で雇うと言っている一方で、45歳以上の社員については、希望退職者を募るなどして1万人近くリストラをすると公表しています。このように、多くの会社が深刻な人手不足で悩む一方で、リストラを加速させ、街には失業者があふれるという不思議な社会が近づいているようにも思います。多分、AIに仕事を奪われた人は、低賃金の単純作業に再就職するか、失業するかの選択を迫られることになるでしょう。

だとすれば、これからの時代、なんで勝負するのか?そこが問われるわけです。AIが普及する時代にAIの得意なことで人間が勝負を挑むのは、先の大戦で米軍のB29爆撃機を竹やりで撃退しようとしたのと同じようなものでしょう。

先ずは、これまで当たり前だったことが変わってきていることを受け入れることでしょう。先ほども言いましたが、最近大企業の採用担当者は、「いい人材がまったく採用できない」と嘆いています。しかも、やっと採用しても、多くの大企業で大量の社員が入社3年以内に退職しています。それは、これまで有効だった大学というスクリーニングが機能しなくなっていることを意味しているのだと思います。

これまで、大企業などでは、偏差値の高い大学に進学できた人や資格試験に合格した人に対して、相当高い確率で「出世」が担保されていました。高卒と大卒、大卒でも有名大学を出たか、難しい資格を取ったかどうかで生涯賃金に大きな違いが生じていたため、子供に「いい大学」に行かせることは、親にとって比較的ローリスク・ハイリターンな投資でした。企業側にしてみても、偏差値の高い大学に入学できる学力のある人さえ採用していればよく、そういう人は実際の業務でも高いパフォーマンスを発揮することを実証していたわけです。従って、名門と言われるような会社は、どこも、表向きは人物本位などと言いつつも、実態は出身大学や出身学部、成績や資格等を重視した採用をしてきました。ところが、この図式が崩れ、ツケが回ってきています。そのことは、今回皆さんにお届けした理念本「セリオ」第5巻にも巻頭言でこのように書きました。

 

“本書では、近年すさまじい勢いで加速するデジタル革命にも言及しましたが、時代の流れはどんどん変化しています。人生という川の途中で岩場にたどり着いたからといって以前のように安心していてはいられなくなりました。有名大学に合格しさえすれば安心、特定の大企業に入社しさえすれば安心、この資格を取りさえすれば安心と思われていた「幸福への入場券」はいつの間にか使えなくなりました。本書は、そうした時代背景の中、「社員の幸福実現」という経営理念実現に対して、経営者としてどう向き合うべきかという決意を述べたものです。”

 

これは皮肉でも何でもありません。世の中は、学歴や資格ではなく、AIやITでは代替不能な人財が求められる時代に変わっているのです。しかも、そうした柔軟な発想で自ら価値創造できるようなクリエイティブな人財は、思考停止状態の古い体質の企業などは見向きもしないため、ますます人手不足は加速しています。

 

ここで、経営者としてなすべきことは、第一に資金の生産性を上げることです。これは私の得意分野でもありますが、資金の生産性向上は『財務的思考』ができるかどうかにかかっています。ここは時間の都合もあるので今日は深入りしません。

次に、時間の生産性を上げることです。いつも申し上げていますが、あらゆる資源のうち最も高価なものは「時間」です。タイムベースマネジメントとは、分かりやすく言えば、同じ時間で今の二倍の生産性を上げることです。先ほどの今瀬会長のようにクリエイティブな仕事をすれば、二倍どころか何百倍、何千倍にもなるでしょう。そういう人財はAI時代にも間違いなく引っ張りだこになるでしょう。

 

3.成長をマネジメントせよ

ドラッカーは、成長には三つの種類があると言っています。

三つの成長とは、

①健全な成長

主要資源の生産性を上げる成長

②害はあっても益のない不健全な成長

資源の生産性を上げもせねば下げもしない

脂肪太りのような成長

③命を危うくする悪性の成長

がん細胞の増殖のような成長

であり、自社の成長を悪性のものへ導いてはならないと締めくくっています。

 

さて、この「健全な成長」「不健全な成長」「悪性の成長」とはどんな成長でしょうか?

ずばり、わが社で言えば、「健全な成長」とは「社員の幸福実現」を筆頭にいわゆる「五方よし」の経営を促進する成長でしょう。そして、それを阻害するようなものが「不健全な成長」であり、真逆の経営をすることが「悪性の成長」でしょう。

たとえば、目先の売上や利益を増やすために、

・「より下請け的な仕事」

・「より価格競争の厳しい仕事」

・「より景気頼り、市況頼り、国の政策頼りの仕事」

などを増やす経営で成長させることでしょう。

また、先述の通り、経営者が「思考停止」状態に陥って、過去こうして成功したからこれからもそうするというような経営で大きくしていけば、やがて間違いなく事業は成り立たなくなるでしょう。

 

また、気をつけておかねばならないこととして、坂本先生がおっしゃる通り、大企業と中小企業はまったく違う生き物だということを認識しておくことです。“像が蟻より優れているわけではない”ように、企業も、決して大きいから優れているわけではないということを理解し、従業員数や売上高なども、自社にとって適正な規模にとどめることも知恵だと思います。

「単に大きくなること」は成長ではなく、膨張にすぎません。それには何の意味もないのです。従って、経営担当者は、自らの組織が大きくなる必要があるか否かを知っておかねばなりません。そのためには、自らの事業が成長に適した市場か否か、成長してよい健全な事業であるか否かをしっかり見定めておくことが大事です。そういう意味でも、「思考停止」経営は、特に変化が激しい時ほど「不健全な成長」を助長し、「悪性の成長」を促すことになってしまいます。これは、経営幹部だけが考えればいいということではなく、社員のみなさんの未来に大きくかかわることだけに、自分のこととして考えるべきテーマであると思います。

先ほども申し上げましたが、ATMの導入で銀行の窓口が消滅したように、デジカメの普及で街のDPE屋さんが姿を消したように「すでに起きている未来」では、AIに代替される大量の仕事(約47%)が消滅すると言われています。

「人を大切にする経営」とは、お人よしの温情主義経営ではありません。本来AIに代替すべき仕事をさせたまま、飼い殺し的に雇用を維持するような経営ではなく、AIにできる仕事は積極的にAIにやらせ、社員にはAIにはできない、より高いWTPを創造する仕事ができるように導いていくことだと思います。

 

4.人財の育成に注力せよ

 

4つ目の心得は、人財育成です。

人を育成し、責任ある地位につけることが今日ほど求められている時代はない。

人財を生産的な存在に高めることこそがマネージャーにとって最大のチャレンジである。

 

AI時代に必要な人財とは、“有効供給の創造”や“WTPの創造”ができる人財だと思います。それは「自分の頭で考えることのできる」人財でもあります。皆さんは、それをあまり難しく考える必要はありません。「考える力」は、生まれつきの部分もありますが、努力の余地もたくさんあるからです。そのためには、先ほども申し上げたように、先ずは、コピペの習慣を捨て、自分の頭で考える習慣をつけることです。

 

以上、今月は、乱気流時代を生き延びるための知恵として

  1.資源を機会に集中すること

  2.資源の生産性を上げること

  3.成長をマネジメントすること

  4.人の育成に注力すること

について話をしました。

来月も引き続き、SERIO4.0のキーワードであるBe Creative! How to become a Creative Personをテーマにお話したいと思います。