※このコラムは、毎月月初に行われる本社朝礼で、社員向けにお話した内容を文章化したものです。

これは10月1日に本社で内定式が行われた際の写真です。来年度は11名の方が入社してくださる予定です。来年は新卒としては初めて外国人の学生さんが入社してくれますが、彼らが入ってくる2020年度から新しい中期経営計画がスタートします。下期から幹部の皆さんが計画を立ててくださるわけですが、今月は、その参考になる話をしたいと思います。

今日は、『SERIO4.0』というタイトルを付けましたが、これが来期スタートする中期計画のタイトルでもあります。なぜこのタイトルにしたかというと、これまでとは発想のステージが変わることを印象付けたかったからです。

経営計画を立てるときにどういう着眼点で立てたらよいかということは、3年前の経営計画を立てる際にも朝礼で数回に分けて細かくお話ししました(理念本セリオ・第3巻参照)が、一貫して言い続けていることは「すでに起きている未来」にミートするということです。この「すでに起きている未来」という言葉を私はよく使いますが、これは1990年台にドラッカーの本の題名にもなった言葉です。ドラッカーがポスト資本主義社会としての知識社会を表現した際に、それは「すでに起きている未来(Future that has already happened)」であると表現したのですが、その言葉に象徴されるドラッカーの考え方が当時30代後半ではじめて経営と向き合うことになった私の心にものすごく響きました。それは、未来というのは、当てずっぽうに予測するようなものではなく、現在の中にすでに起きているのだという考え方です。現在すでに起きている未来の種を原因と結果の流れでしっかり見ればそこには未来が確実に見えてくるものだということです。それから30年くらいたったわけですが、「すでに起きている未来は何か」を考えてきたつもりです。

ということで、今月は、私が社長になってから、これまでわが社で行ってきたイノベーションを時系列的に整理しつつ、これから向き合うであろう「すでに起きている未来」について話をしたいと思います。

 

1.SERIO2.0(2014-2016)で実施したイノベーションについて

 

分かりやすくするために、創業以降私が社長になるまでをSERIO1.0の時代とさせていただきました。SERIO2.0で実施したことは一言で言えば『理念経営への大イノベーション』です。これは、第二の創業と言っても過言ではないくらい、会社経営のあり方を土台から変える大転換であったと思います。会社の存在意義と経営目的を「社員の幸福を実現する」ことであると明確にした上で、そのためにどうやったらGoing Concernできるのか自分で考え実行するということを方針としました。そして、それまでは社長が行っていた経営判断を現場で行えるようにあらゆる仕組みを変えました。

会社経営的には、「人を大切にする経営学会」などで紹介されている他社の事例と同じようにコペルニクス的な大転換であったと思います。

具体的なイノベーションは以下の通りです。

 

第一に、MBOによってオーナー経営から独立(Independent)し、脱・同族経営を実現しました。

創業されたオーナーご一族が所有していた株式を役員幹部が全株引き取ったわけですが、これは全国的に見ても、未だに事例が少ないくらい画期的なことでした。これで社員が自主的に自由に経営できる基盤ができたわけです。

 

第二に、真の自由を実現するSelf Help型の組織風土を醸成し、脱・指示待ち型組織を実現しました。

最初の3カ年計画は「Rising計画」という名称にしたわけですが、これは新しい太陽を昇らせたいという思いで付けた名称です。これまでは、オーナーが太陽のような存在で皆さんを照らしていましたが、今度は社員の皆さん一人ひとりが新しい太陽となり、自分で会社を照らし、世の中を照らす会社になってほしいという思いを込めてつけたわけです。そのキーワードがSelf Helpです。各人が幸せになる義務があるのだから、誰かの指示を待つのではなく、自分で考えて、自分で責任をとって、自分で行動し、自分と仲間の幸せを実現していきましょうということです。

 

第三に、イノベーションを恐れない組織へ転換し、脱・現状維持を図りました。

イノベーションの方向性としては、知力ベースマネジメントとタイムベースマネジメントを打ち出しました。脱・現状維持というのは非常に重要な考え方です。以前も申し上げましたが、反対意見とか否定的な意見は決してネガティブ思考、マイナス思考ではないのです。イノベーションを恐れない組織に変えていく上で、最もこれを阻害する否定的な考え方とは何かというと、それは「今のままでいいじゃないか」という現状維持の発想です。何かやろうとした場合に、それはこういう理由でよくないとか、ダメだというのは、決して否定的な考え方ではなく、単なる反対意見です。そういう反対意見を言うことは、結構勇気もいりますし、エネルギーがいります。実は、発展を一番阻害するのは、「何もしないでいい、今までこうだったからこのままでいい」という現状維持の発想であり、これこそが否定的な考え方なのです。そこでそれを捨てましょうと強調したわけです。

要するに、すでに起きている未来に向かって、マインドセットを変えるという戦略が実施できる基礎固めをしたのがSERIO2.0であったと思います。

 

2.SERIO3.0(2017‐2019)で実施したイノベーションについて

SERIO3.0に相当する次の3ヵ年で行ったイノベーションはどんな内容だったかというと、

第一に、WTPの創造を明確な経営目標としました。

WTPという考え方は経営理念を制定した際からずっと掲げてはいましたが、具体的に計画としてチャレンジしたのは、次の3ヵ年計画からでした。そこで、これまで見たことのないような新しい顧客満足を創造し、新しいWTPを創造してほしいという願いを込めて、New Frontier計画という名前にしました。これは、脱・下請け宣言であり、脱・価格競争へのチャレンジでもあったかと思います。

 

第二に、業務内容的には受託開発型への業態転換を行い、脱・派遣型ビジネスを実施しました。

以前、当社は、新卒の社員を大手企業の保守メンテナンス要員として派遣する人材派遣型ビジネスが主体でした。こういう業務形態は、IT業界では一般的なものですし、経営サイドとしては、毎月安定的にキャッシュが入ってくるというメリットがありますが、人材育成という観点で見ると、十分な社員教育がしにくい業務形態であるため、IT業界の技術的な変化にともなってスキル的なミスマッチが起きやすく、また収入的にもなかなか上昇が見込めないため、非常に退職率が多いというデメリットがありました。極端な言い方ではありますが、ヒトという資源を使い捨てにする傾向が強いビジネスであるため、以前は当社も退職率が非常に高く、同期入社の6割、7割が辞めていくという状況でした。当社は昨年創業30周年を迎えましたが、入社20年目以上の方は少なく、多分8割以上の方が辞めていると思います。それは派遣型ビジネスを続ける限り必然的に起こることなので、理念に照らしてそういうビジネスモデルから脱却したわけです。

第三に、“人を大切にする経営”への脱皮です。人本主義経営、見えない資産経営への転換と言ってもよいと思いますが、脱・収益重視経営であり、脱・株主重視経営でもあります。

これは、まだまだ途上ではありますが、着実にそうした風土が根付きつつあると思います。これがSERIO3.0の内容であると思います。

 

3.SERIO4.0(2020‐2022)で取り組むべき「すでに起きている未来」への対応とは?

さて、ここからが今日の本題です。これからお話する内容の大半は、3年くらい前から役員が話をしていることであり、すでに幹部の方々は認識していることではありますが、来年から始まるSERIO4.0を考える際のヒントとして、協力会社の方々へもお話しておきたいと思います。

 

先ず、申し上げておきたいことは、計画を立てるに際しての前提は変わらないということです。経営理念を貫くという姿勢はピクリとも変わりません。“ちはやふる経営”とも言ってきましたが、これは不動です。また、基本的な戦略も変わりません。特に、すでに起きている未来に向かって、マインドセットを変えるということです。先ほども申し上げましたが、組織は直ぐ現状維持に陥るため、よほど意識しておかないとマインドセットをチェンジすることはできません。これが成功するためのキーワードだということを知っておいてほしいと思います。

 

エピソード① 「岡山県知事へのお礼状」

 

先月も少し話しましたが、8月末に、スタンフォード大学で開催された「米日カウンシル」に参加される岡山県の伊原木隆太知事に随行してシリコンバレーに行かせていただきました。この視察の内容については、山陽新聞に2回ほど掲載され、OHKでも夕方のニュースで特集されたそうです。私は、以前このコラムでもご報告したことがありますが、5年前に知事が訪問された際にも随行させていただきました。当社以外には、県内の4つの会社の社長さんと社員の方が参加されましたが、どの会社も随行は今回が初めてでしたが、皆さんシリコンバレーでビジネスのきっかけをつかんで、自社の製品を世界的に展開したいという熱い思いを持たれている素晴らしい方々ばかりでした。

シリコンバレーには、これまでも業界の視察等で何度か訪問させていただいていますが、現地で活躍されている日本人のコンサルタントの方やスタートアップの経営者の方とお話する機会はほとんどありませんでした。今回は、知事とご一緒に話を聞くという機会をいただけたため、そういう方々にたくさん会うことができました。帰国後、県知事にお礼のお手紙を書いたので、その手紙の一部を引用しつつ、今私が感じている「すでに起きている未来」についてお伝えしたいと思います。

 


岡山県知事 井原木 隆太様
関係各位様

お礼と所感

セリオ株式会社 壹岐 敬

 この度は、米国ご出張に随行させていただき真にありがとうございました。知事並びに企画していただいた県庁の関係各位、ならびにご一緒いただいた企業の皆さまに厚く御礼申し上げます。

今回同行された他の企業様方とは違い弊社は海外での事業展開を考えているわけではなく、私の目的は、シリコンバレーで「すでにおきている未来」をできるだけ生の感覚で感じ取り、次の事業展開に生かすことでした。

具体的に申し上げれば、ビジネスモデルの変革の推進です。

世界で日本車が爆発的に売れたのは、長持ちする性能、燃費の良い車が安く買えることが一番の要因だったと思います。しかし、その競争力の背景にはエンジンや燃費の向上が数年単位でしか変わらなかったことがあります。しかし、これは年々級数的に性能が伸びる半導体や、新しい性能向上が毎月の様に加えられるソフトウェアの業界には当てはまりません。「長く故障しない」という価値よりも、「より便利になる」方の価値が高くなっているわけであり、私もこれまでもそこに着眼して当社のビジネスの方向性を転換してまいりました。

日本では、ソフトウェア業界においても、未だにお客様に、より完成度の高い製品(システム)をお届けすることが目的で、その後のメンテナンスは補助にすぎません。

ところが、この数年米国や中国を訪問した際に見てきたことは、システムを納品した後にどんどんリアルタイムで新しい付加価値(機能)を付け加えるビジネススタイルでした。

それはiPhoneやAmazonのアプリだけではなく、基幹システムにおいても自動車等のソフト開発においても実施されていました。

アジャイル開発とかDevOpsとかマイクロサービス化とかいろいろ言い方はありますが、重要なことは抜本的なイノベーションへの決断だと思います。

今回の訪米でも、巨大なレガシーシステムを抱えた企業が大胆なビジネスモデルの転換をしてきた生の事例を聞かせていただけたことは本当にありがたいことでした。

 


 

お礼状の冒頭にこういうことを書いたのですが、ここに書いてあるように「丈夫で長持ち」という価値よりも、「どんどん便利になる」という価値へのマインドセットの転換がシリコンバレーではもう何年も前からなされており、それは「すでに起きている未来」であるというところがポイントです。

ソフト開発的に言えば、システムを構築した後、リアルタイムでどんどん新しい付加価値(機能)を付け加える開発スタイルが米国や中国では普通になっています。そして、こうしたソフトウェアの開発は、従来のウォーターフォール型とは違う次元の開発の仕方になっています。それを、SoRとSoEの違いとか、アジャイルとか、DevOpsとか、マイクロサービスとか色々な言い方で言っているわけです。いずれにせよ、この数年、米国や中国ではそういうスタイルに変わっているのに、日本だけは一向に変わらないような気がします。その理由は、たくさんあると思いますが、やはり現状維持傾向が強く、「とりあえずこのままでいいのではないか」と思っているからではないかと思います。逆に、ここのところのマインドセットを変えれば新しい未来は開かれるのではないかと思います。そういう意味での「抜本的なイノベーションへの決断」これが、われわれが取り組みたいSERIO4.0なのです。

 

エピソード② SUBSCRIPTION  BUISINESS MODELについて

 

「すでに起きている未来」は、モノがあふれている世界(マテリアルワールド)であり、断捨離など捨てることそのものがブームになる時代、モノを増やしたくない時代でもあります。こうしたニーズに応えて登場したビジネスが最近いろんな業界で話題になっているサブスクリプション型のビジネスモデルです。衣料品の月額着放題はかなり一般的になってきましたし、最近では、カレーが月額3千円で食べ放題などというお店ができています。

 

このサブスクリプション型のビジネスモデルでは、「より便利になる」ことがネットを通じたソフトの更新で可能になることが最大の特徴です。皆さんもご存じのようにiPhoneとガラケーの違いもここにありました。従来の売り切り型ビジネスであれば、一度商品化した後で機能を追加するためには、機種変更して買いなおすか、回収して部品を交換したりせねばなりませんでした。ところがネットを通じてソフトの更新ができることで簡単にできるようになったわけです。

このビジネスモデルの特徴は、購入はあくまでもきっかけ(もしくは囲い込み)であることです。世の中の商売は、ソフトウェアの更新によってお金を稼ぐビジネスへと移行しています。中国のWeChatやアリペイがこの典型ですし、アマゾンもそうです。彼らは、もともとはゲームのサイトだったり、ネット通販のサイトだったりしたわけですが、その後ソフトウェアの更新によってコンテンツも機能も変化し、様々なサービスが課金型で受けられるようになっています。

かつてウィンドウズで世界を席巻したマイクロソフト社は、売り切り型のビジネスの典型企業でしたが、モバイルフォンOSへのビジネスチャンスを逃がしたあたりから時価総額ランキングが急低下しました。ビル・ゲイツは、全社のマインドセットを変えるためにインド人のサティア・ナデラ氏をCEOに抜擢し、ナデラ氏は『Hit Refresh(リフレッシュボタンをヒットせよ)!』を掲げて経営体制を一新し、SUBSCRIPTION型のクラウドビジネスに大転換して、時価総額上位に再浮上しました。ナデラ氏の著書には、わかりやすく「すでに起きている未来」への取り組み方が書かれています。それは、これから皆さんが体験するソフト開発にも間違いなく直結することでもあると思います。

 

エピソード③ SUBSCRIPTION BUSINESS MODELにおける企業業績について

 

また、このビジネスモデルへの変化は財務会計にも影響をもたらしています。どういうことかというと、サブスクリプションモデルでは、事業規模にもよりますが、初期投資が大きいため、足元の会計的な利益は下がる傾向にあり、アマゾンのようにずっと赤字が続くこともあるのです。確かに足元の利益は出ないのですが、長期的に使い続けてもらうことで現在の顧客の満足度を高め、将来の顧客も含めた囲い込みが可能になり、未来のキャッシュを生み出していくビジネスモデルなので、そこを投資家は評価しているのです。つまり、スナップショット的な会計的利益よりも、未来の利益の総額が評価される時代へ変わっているということです。

最近セミナーなどでよく使われる表で、企業の時価総額ランキングの比較表があります。その表を見ると、30年前は日本企業が30社くらいランクインしていて、上位は日本企業が独占していました。私が在職していた住友銀行など当時は世界で第3位だったのですが、今は残念なことに完全にランク外です。単年度では、メガバンクも近時大変立派な利益を計上しているのですが、株価に反映しないのは、長期的に見てビジネスモデルが評価されていないからです。日本企業では、トヨタ自動車が30位台にかろうじて1社入っているだけで、大半はGAFAに代表される米国のIT企業やアリババやテンセント等の中国の企業です。そういう会社の中には、単年度決算で見れば赤字の会社もありますし、配当もしていない会社もあります。日本では相変わらず、足元の利益を重視することが主流ですが、世界的には将来どれだけキャッシュを生むかが評価されているのです。最近、事業承継のためのM&A案件が増えていますが、そういう時の企業価値を考える際にもその傾向性はあるようです。私は、ビジネスモデルが時代遅れになっているのに、BS上に資産があるからその会社に価値があると考えるのはとんでもないことだと思います。いずれにせよ、我々は、未来にどれだけ価値を生んでいけるかを考える会社になることが大事だと思います。

 

 

自動車業界は消滅した?

 

「すでに起きている未来」の話を続けます。先日、名古屋で開催された「 オートモーティブ ワールド-クルマの先端技術展- 」という展示会を見学に行ってきました。地域的に自動車関連の会社が多いため大変多くの来場者で会場は混みあっていましたが、この展示会に行って一番感じたことは、自動車業界というのはもうなくなったのではないかということです。なぜなら、トヨタ自動車の副社長の基調講演から始まり、セミナーもたくさんあったのですが、車そのものの性能や乗り心地がどうかとかいう話はほとんどなかったからです。大半がCASE(Connected, Autonomous, Sharing & Service, Electric)に関連した話で、シリコンバレーで聞くような話でした。

ほんの100年くらい前に世の中の移動手段は馬車から自動車へと移行したわけですが、それと同じくらいの変化が現在ただいま起きているのではないでしょうか。大切なことは、「すでに起きている未来」として、CASE等の変化が既存の自動車業界をかつての馬車の立場に追い込もうとしていることでしょう。そして、その変化を主導しているのはIT技術だということです。

 

少し、話は変わりますが、最初に「iPhone」が登場した時に、日本の携帯電話メーカーの多くは、「うちでも作れる」と考えたそうです。しかし、そう考えた会社は一社も残っていません。それはなぜでしょうか。多分、彼らには「iPhone」がモノとしてしか理解できなかったのだと思います。ところが、「iPhone」が提供したWTPはサービスそのものだったわけです。彼らが、購入後に消費者が体験する満足感(User Experience: UX)を追求していたことが理解できなかったからではないかと思います。

今度は、自動車においても同じ間違いを冒すこともあります。例えば、テスラ―の車の構造を調べて「この車ならうちでも作れる」という発想に陥ってしまうようなことです。しかし、大切なのは「作れるかどうか」ではなく、「UXを創造(デザイン)できるか」です。どんな性能の車を作るかではなく、イーロン・マスクのような発想ができるかが問われているのだと思います。デザイン・シンキングは当たり前のことになってきていますし、そういう意味で、つくづく自動車業界という概念がなくなっていることを感じました。ちも、「自分たちの業界はここまででいいのだ」という固定観念に閉じこもり、「自分たちはここまでしかしないのだ」という自己限定をしていたら、きっとWTPを提供できなくなるに違いありません。

エピソード④ MaaSの世界

 

くだんのセミナーでは、MaaS(Mobility as a Service)に関連した話をたくさん聞くことができました。UBERやLyft、WAYMO、テスラ―等MaaS関連企業の最新動向や、シリコンバレーのスタートアップ企業や北欧で進んでいる移動サービスなどの話です。WAYMOという会社は聞いたことがない方もいると思いますが、グーグル(アルファベット)の子会社で自動運転関連のサービスを提供する会社です。

MaaSとは、車を所有したいというニーズではなく、移動したいというニーズにミートしたビジネスで、今までの販売モデルとは全く違うサービス(UX)を提供する巨大なビジネスチャンスであると思います。移動サービスは、95%の車が眠っている状況を打破し、稼働率を高め、シェアリングを前提として、いかに安く、補償等を含めた便利な選択肢を提供できるかが問われています。シェアリングについては、中国でもシェアバイクなどの事例を見てきましたが、行くたびにサービスの概念が変わっているので、変化スピードの速さには驚かされるばかりです。

具体的には、UBERやLyft 、WAYMOのように自動運転とシェアリングを掛け合わせた移動体自体のサービスを提供する会社移動情報に関連したプラットフォームを提供する会社の二つに大別されるようです。移動情報サービスとは、たとえば地点間移動の最適化を図るサービスです。ある地点まで行くのに、UBERを使ったらいいか、自動運転タクシーがいいかなどを瞬時に選択したり、その場合相乗りは可能かどうかなどの情報を提供したりすることです。また、ダイナミックプライシングという需給状況に応じた価格設定のサービスもこれに含まれます。たとえば渋滞の状況に応じて価格が変わるようなサービスのことです。また、移動コストを広告費化するサービスもあります。これは、日本でもアリババがインバウンド客向けに実施しています。日本を訪ねる中国からの旅行者をAIが選別して、高い買い物をしそうな人には、関空に降り立つと同時に携帯に「最寄りのアウトレットまで無料リムジンが送迎し、ホテルまでお送りします」などというメールが入るのです。そのリムジンの費用はアウトレットのお店が持つわけで、要するに移動コストを広告費化するわけです。データを活用することで、こういうサービスも増えてくるでしょう。

また、移動目的に応じてカスタマイズされた車内でのコンテンツサービスを提供する会社も続々と登場しています。

 

エピソード⑤ 2025年の崖

 

昨年、通産省が、『2025年の崖』と題して、「日本企業は大きな技術的負債を抱えており、このままではDXを実現できず2025年以降毎年最大12兆円の経済損失が発生するだろう」というレポートを提出し、警鐘をならしました。最近、この『2025年の崖』を乗り越えるにはどうしたらいいかということがいろいろなところで話題になっています。

日本企業のIT投資は、ほとんどが会社を運営していくための基幹システム等のランザビジネス(現行ビジネスの維持・運営)に用いられており、その金額は莫大です。ところが、そうした投資がビジネスモデルを変えるわけでもなく、直接的な収益を生むわけでもありません。しかも、過去の巨大システムのメンテナンスに莫大な費用がかかるため新しいビジネスを展開するための投資ができないのです。もし、この状態が今のままずっと続くと、2025年には日本の産業全体が崖から転落していく可能性があるのだということです。

先日、菅田将暉さんが主演した『アルキメデスの大戦』という映画を観たのですが、これと2025年の崖のイメージが重なりました。この映画は、アメリカとの開戦に際して、限りある貴重な資源を投入するなら、もっと戦争に役立つ航空母艦を作るべきで、お金ばかりかかって戦略上なんの役にも立たない巨大な戦艦を作ってはいけないということを理論的に証明し、その建造を阻止するための方法をあの手この手で考える科学者の話です。「日本は戦艦大和と心中する気なのか?」問うシーンがありましたが、巨大なモノリスシステムとともに倒れようとしている日本の産業界とダブって見えたわけです。

会計的な言い方をすれば、IT投資の不良資産化が進み、『IT負債』と化してはいないかということです。このことは、何年も前から指摘されてきたことではありますが、このレポートでようやく尻に火が付いた感があります。技術的にはモノリスからマイクロサービスへの転換だと思いますが、これも、当然ながらSERIO4.0の中心的なテーマとなるでしょう。

 

 

最後に

飛行機が発明されたことで航空業ができたように、テクノロジーが変わるとビジネスモデルも変わります。1976年創業のApple Computerは最初パソコンの会社でしたが、「iPhone」がヒットした2007年に社名をAppleに変えました。その後、ハードからソフトの流れに反応し、「iPhone」の販売から動画やゲームに軸足を移し始めています。

私たちも、単にこの分野が儲かりそうだとか、本業が思わしくないからという受動的な発想ではなく、テクノロジーの進化とそれに伴う消費者の生活スタイルの変化をとらえ、次のスタンダードになるキーテクノロジーは何かを先読みして、主体的に大胆に船の進路を変えていきたいものです。それは、「うちでも作れるかどうか」ではなく、「UXを創造(デザイン)できるか」に挑戦することではないかと思います。

そういう意味で、私は、SERIO4.0(2020-2022)の Main ConceptはズバリBe Creative!( 創造的な人になろう)ということであり、  How to become a Creative Personであると思います。

 

 

来月からは、創造的になるとはどういうことなのかを考えていきたいと思います。